「3D制作でお勧めのソフトを教えてください!」これはネット上でよくある質問です。そして3Dデザイナーとして、この質問に答えると正解は以下の通りです。
3D制作ソフトとして有名な総合ソフトはmaya、3ds max、無料ソフトならBlenderなどがあります。もし将来3Dの仕事をやりたいならmaya、3ds maxがお勧めです。仕事の需要としては、この2つのソフトが最もよく使われています。
もし趣味で3Dを編集したいならBlenderがお勧めです。
このほかにも専用機能を持ったソフトがあり、造形ではZbrusi、装飾ならMarvelous Designer、高度なプロジャルモデリングで有名なHoudini。
基本的に3Dの分野は1つのソフトでは完結しない世界です。いくつものソフトを横断的に利用し、1つのプロジェクトを進めていきます。
複数の専門ソフトを駆使し、先ほど挙げたmayaや3dsMaxでまとめ上げ、1つの作品を制作します。制作できた作品はアニメーションとしてレンダリングしたり、ゲームエンジンで利用したりします。
そのため、先ほどの「3D制作でお勧めのソフトを教えてください!」という質問にはmayaか3dsMax(趣味ならBlender)を覚えたうえで、進みたい分野の関連ソフトを覚えるのが正解かもしれません。
3Dモデルを2Dデザインに取り入れたい個人デザイナーには3Dの総合ソフトウェアは不要
さて、「3D制作でお勧めのソフトを教えてください!」という質問に、3Dデザイナーとして答えると先ほどのような答えになりました。
「mayaか3DsMax、趣味ならBlenderを学ぶべし!」
とくに最近はBlenderを押す人が多いですね。昔より使いやすくなったとのことで、利用者が増えてきているためでしょう。
ただ、この質問者の人が何をやりたいのかによって別の選択もあります。もし質問者が3D制作をガッツリと楽しみたい、将来の仕事にしたいという人なら、確かに先ほどの答えで正解でした。
ですが写真の編集やイラストの制作のため、3Dモデルのレンダリング画像だけが欲しいという方が、一定数この質問をする人の中に混じっています。こういった人たちは将来3Dの仕事をしたいというわけではないでしょう。
結果、1年の利用料が二十万を超えるmayaや3DsMaxではなく、無料のBlenderを利用して自分の制作に役立てようとします。それはそれで悪くないとは思います。
ただ3Dを扱うものにとっては常識なのですが、そもそも3Dで1点物の静止画作品をつくるのは手間がもの凄くかかります。ここに2D制作がメインの人との大きなギャップがあるように感じます。
「3Dモデルを使えば背景を簡単に作れそう!」
あながち間違えてはいないのです。ただ場合によりけりです。
3Dで静止画を作る場合、以下の流れで制作されます。(ボーンやリグなどは静止画前提のため含めていません)
モデリング→UVマップ作製→テクスチャ作成&質感設定→(場合によればパーティクルでエフェクト作成)→ポーズ調整→ライト設置→レンダリング
このように様々な工程を経て3DCGが制作されるわけです。3DCGがなぜ得意分野のはっきりした専門ソフトと、プロジェクトをまとめ上げる総合ソフトに分かれているのかの一端がここにあります。
それぞれの分野を担当する専門の3Dデザイナーが複数のソフトを利用して、1つの大きなプロジェクトを進めていくのが3Dデザインの世界です(ただし現場により状況は様々で一概には言えませんが)。
もちろん個人ですべての工程を作ることもできます。ネットを見てみれば個人製作の3Dモデルや3DCGは大量にあります。
ですがすべて3Dで静止画を作るより、フォトショップやクリップスタジオでレタッチしたほうがはるかに簡単です。「3D=効率がいい」ではなく、3Dモデルを使いまわす場合に効率がいいのです。
3DCGは1点物の静止画との相性が最悪です。1度しか使わないモデルを作り、レンダリングをするのでは時間だけが無駄にかかってしまいます。
こう言うと「いや、自分はZbrusiで3Dモデルを作るほうが効率がいい!マルチパスレンダリングとペイントオーバで仕上げたら早くなるだろ。お前の腕が悪いだけだ」などと言う人もいるでしょうが、あくまでも一般論です。
ですが・・・
「2Dデザインの効率化で3Dを習い始めたけど、モデリングに手間取ってイラストの制作がぜんぜん効率的にならない」
結構こんな人も多いのではないでしょうか。
そもそも論ではありますが、数度しか使わないような3Dモデルを自分で制作するのは方向性が間違っています。アシスタントに3Dデザイナーを雇って、何度も使いまわす背景などの造形を任せられるといった環境でない限り効率化はできません。
イラストで3Dを使いたい人におススメのソフトとは
それでは個人の2Dデザイナーには3Dモデルを使っての効率化は不可能なのでしょうか。
残念ですが1人で制作される環境の場合、3Dモデルを1から構築してイラストの効率化をはかるのは無理があります。ですが3Dモデルを自分で作るのではなく、既存の3Dモデルをレンダリングして素材として利用するというなら効率化ができます。
既存の3Dモデルをレンダリングする方法というと、デザイナーの性格として拒否反応をする人がいます。
「自分の作風にあった3Dモデルを使いたいから、Blenderでモデリングするほうがいい!」
そういう人たちを止めはしません。
ですが3Dに対する認識を間違えています。1年後にモデリングの技量が上がって3Dモデルが作れるようになっても、先ほども言いましたが3Dモデルと静止画の相性は最悪なんです。自分でモデリングをして作っても、2回や3回ぐらいしかイラストで使わなかったら物凄い時間の無駄になってしまいます。
その時間をイラストの制作にあてれば、どれほどの作品ができるか考えてみるべきです。あなたは3Dデザイナーになりたいのでしょうか、それとも2Dでイラストを制作したいのでしょうか?
さて、おすすめのソフトの紹介です!
既存の3Dモデルのレンダリング画像を利用して作業を効率化したい。または画像をポリゴンに張り付けて、建物などの構造物を効率的に描きたいといった需要に答えられる一つのソフトがあります。
それがDazStudioです。
これまで3D制作をやりたいという人に、DazStudioを進める人はあまりいませんでした。
それは初心者に3Dの総合ソフトを進めるのは、3Dデザインに趣味か仕事でかかわっている人たちだからです。余談ですが、そういう人は自分がメインで使っているソフトを進めてきます。
なお、厳密にいえばDazStudioは3Dの制作ソフトではありません。
そしてDazStudioのレンダリング(制作できる絵)は、ほかの総合3Dソフトより空気感で劣る部分があります。かつエフェクトやアニメーションが貧弱で、3D制作ソフトではないのでポリゴンでモデルを作ることもできません(少しだけポリゴンを編集する機能はあります)。さらにDazStudioを覚えても3Dの仕事はありません。
まるでDazStudioを使うメリットがないように感ずるかもしれません。ですが2Dをメインとして扱う人たちにとっては違います。3Dモデルを素材としてレンダリングするには無類の強さがあるソフトです。
レンダリング画像が劣る!
レンダリング画像がほかのソフトよりも劣るといっても、素材として使う分には十分です。そもそもレンダリング画像を突き詰めて設定するのは時間がかかる作業です。3Dでのレンダリングはある程度のところで切り上げて、フォトショップなどで編集するほうが効率的です。
エフェクトが弱い!
エフェクトが弱い部分も問題ありません。そもそも総合3Dソフトでも、パーティクルを使って作風に合わせたエフェクトを設定するは手間がかかります。中途半端な出来のエフェクトはないほうがましな存在です。静止画の場合、フォトショップで後から編集するほうが簡単です。
モデリングができない&DazStudioの仕事案件がない
そもそもモデリングソフトではありません。3Dをガッツリやりたい人は総合3Dソフトを習うのがおススメです。
3Dモデルは有料
何度も説明しましたが、3D制作は大変な作業です。3Dモデルは無料で使えるなんて都合のいい話はありません。そもそも無料3Dモデルは商業で使えない場合が多いので、素材の書き出し用には向いていません。
ですがDazStudioの開発元は世界中のユーザに3Dモデルの利用権を販売して利益を上げています。そのため日本の有名な写真素材販売サイトよりも、はるかに安い値段で高性能な3Dモデルを買うことができます。
2DデザイナーがDazStudioを使うメリット
それでは2DデザイナーがDazStudioを使うメリットについて説明していきます。
- レンダリング画像の商業利用が可能
- アドオンが充実している
- キャラクターのカスタマイズ、ポーズ、衣装の着せ替えが簡単にできる
- 操作が単純ですぐにレンダリングまで進むことができる
- 静止画で使うなら十分な機能がある
レンダリング画像の商業利用が可能
DazStudioは無料で配布されているソフトです。それでは製作元が何で儲けているのかといえば、DazStudioで使える素材となる3Dモデルのマーケットの運営収入で利益を上げています。
そのためライセンスについても規約がしっかりしており、レンダリングした画像は商業利用が可能となっています。無料の3Dモデルを複数利用すると、規約の関係で管理が大変です。
マーケットで販売されている莫大な3Dモデルをレンダリングして、イラストの制作に役立てることができます。
アドオンが充実している
DazStudioは無料のソフトであり、ベースの機能はお世辞にも優れているわけではありません。ですがマーケットにて個人ユーザー・業者が多数の追加機能を販売されているので、カスタマイズの幅が広いです。
キャラクターのカスタマイズ、ポーズ、衣装の着せ替えが簡単にできる
DazStudioのフィギュアはキャラクターをカスタマイズでき、衣装を着せ変えることができます。
3Dソフトに触れたことがない人には、「ふーん。何を当たり前のことを大げさに言っているんだ」と思われるかもしれません。この機能は3Dデザイナーと2Dデザイナーの反応にギャップがでるところです。自分で1からキャラクターを作る場合、実装するのは大変なんですよ。
操作が単純ですぐにレンダリングまで進むことができる
これはそのままです。3Dモデルを読み込んでレンダリングをサクッとできます。
キャラクターなら衣装を着せて髪をのっけて、ポーズを選択すれば完成です。あとはライトの配置を調節してみれば大体は完了です。顔の造形は有料の素材を別途購入してもいいですし、お気に入りの顔をいくつか事前にカスタマイズしたのを保存しておけば読み込んで使えます。
背景に3Dモデルを配置するなら、有料モデルはライトも配置済みのことも多いので、そのままレンダリングすることもできます。
静止画で使うなら十分な機能がある
静止画で使う素材の書き出しには十分に使えます。お世辞にも高性能なソフトではありませんが、素材書き出し用と割りきって使えば他の追随を許さないソフトです。2Dデザイナーとの相性がいいのは間違いありません。
またDazStudioのマーケットから3Dモデルを入手するだけではなく、FBXやOBJ形式のモデルデータを読み込んで使うこともできます。ただ、その場合はマテリアルの設定が外れている場合があるので再設定をする必要があるかもしれません。